ETC2.0で得られるプローブデータを使って渋滞の原因をピンポイントで解析
ETC2.0になって走行する自動車の色々なデータが収集出来るようになりました。
そこで期待されているのが収集したデータを元にした渋滞の原因解析です。
海老名JCTから東名高速を10キロほど東に走ると「大和トンネル」があります。
渋滞の難所としてあまりにも有名で渋滞情報に登場しない日はないくらいなのです。
2016年7月に渋滞解消に向けて幅を広げる工事が始まりましたが完成時期が確定していない難しい工事になっているそうです。
今回は蓄積されたビッグデータから渋滞を分析して解消する技術について紹介します。
大和トンネル渋滞解消にETC2.0で得られるプローブデータを活用
「大和トンネル」の拡幅工事は難航していて具体的な完成時期が見えてこないそうです。
渋滞解消工事完成までのあいだNEXCO中日本はETC2.0で得られるプローブデータを使って当面の渋滞対策をしているのです。
プローブデータとはGPSを搭載した自動車から得られる移動軌跡情報(緯度経度・車両 ID・時刻)のこと。
この前書いた記事「中国ではすでに顔認証システムを使って近未来SFのようなことになっている」では顔認証システムで国民一人一人がデータベース化されるという話だったんですが、日本でもこういう形で国民の情報が蓄積されていくのですね。
こっちはただ普通に車を運転しているだけと思っていても一台一台の走行データは蓄積されて巨大なデータベースに記録されていくのです。
プローブデータの分析によると
渋滞対策に話を戻しますとプローブデータの分析でおもしろい事がわかりました。
「大和トンネル」の渋滞は平日より休日・祝日のほうが激しく、一般的な渋滞ポイントとは逆なんだそうです。
わかったのは休日に東京方面に向って走行した場合、上り坂の途中にあるトンネル本体の、500メートルほど手前で速度低下が起こっているという事。
これは休日だけ運転する一般のドライバーが無意識のうちに速度を下げているのが原因です。
平日に東名高速を業務で走行するプロドライバーはその地形に慣れているので速度を落とすことなく大和トンネルを通過していく。
それに対して休日だけ運転する一般のドライバーは「そろそろ上り坂が終わりそうだ」と無意識に速度を下げてしまうのだそうです。
こういった一台一台ごとの速度変化が記録されたものがプローブデータで、これを分析する事によって渋滞の原因が解析されているのです。
渋滞の分析には膨大なデータが使われる
このプローブデータの他にも従来からある「道路にカメラを設置して取るデータNシステム※」も膨大なビッグデータになります。
車の動きを100分の1秒単位で撮影し、カメラ1の範囲内からカメラ2の範囲内に移動した車とナンバープレートの画像から、走行中の車の車種や速度を判定するという事もやっているんです。
一秒間に100フレームの映像って、どんだけ高細度映像なんだ、という感じです。
普通の動画は一秒間に24〜30フレーム、道路のカメラの情報量がいかに多いかがわかります。
これって犯罪捜査にも大いに役に立つ感じがしますね。
一瞬しかカメラに映らなかった車でも一秒間に100個の画像が記録されているわけです。
ナンバー・犯人の顔のほか細かいところまで記録されている可能性は高いです。
※Nシステム
Nシステムとは
高速道路に設置してある「オービス」は速度を読み取りますよね。
「Nシステム」はカメラで自動車ナンバーを読取る装置です。
各都道府県によって「車両捜査支援システム」「初動捜査支援システム」「車両ナンバー捜査支援システム」「緊急配備支援システム」と呼び方が違います。
本来の目的は犯罪捜査のため通過するすべての自動車のナンバーを読み取ることでした。
現在では事故現場の目撃者探しにも使われています。
分析によって予算が縮小した海老名ジャンクションの渋滞解消工事
東名高速と圏央道が交差する「海老名ジャンクション」は圏央道の開通区間が増えて交通量が増えたことによって、新しい「渋滞の名所」となってしまいました。
渋滞の原因を探るためNEXCO中日本は8カ所にカメラを設置して走行する車の情報を集めました。
高細度映像で撮られたデータは膨大なものになったのです。
分析をしてみると、東京方面と名古屋方面からの車が合流する地点で速度が低下していると分かりました。
合流後は1車線で上り坂になっている。
そのせいで大型車は加速出来なくなりスピードを落とす、それにつられて後続の車も遅くなっていく。
これが渋滞の原因だったのです。
この渋滞解消のため当初は1車線から2車線へ増やす工事が提案されました。
しかしこれには数十億円以上かかってしまう。
もういちどデータの分析が行われました。
それによってわかったのは問題の1車線部分には路肩があり、それを使って暫定的な2車線にすれば大規模な工事はしなくて済むという事。
このことにより当初は数十億円以上かかるといわれていた工事費用が1億円で済んだのでした。
結果は1日当たり平均5.1時間だった渋滞は完全に解消される事になりました。
今NEXCO中日本はこのような分析による「ピンポイント渋滞解消」を各地域で実施して的確な予算の使いかたを目指しています。
無駄な税金が使われるのを防ぐ
こうした交通関係のビッグデータの解析にはAI(人口知能)が使われていてたくさんの企業がその開発に参加しています。
的確でスピーディーな分析が出来るようになればピンポイントでほんとに必要な公共工事だけが行われて無駄な税金が使われるのを防ぐ効果に繋がるのかなと思います。
でも政治は人間同士の問題だからそこに利権と欲がからむとそんなにスッキリとは行かないのかも知れませんね。
これからの日本は人口減で渋滞自体が減っていく傾向にあると言われています。
もしかして何十年後には渋滞の問題じゃなくてスカスカの道路をどうするかという問題をAI(人口知能)で分析することになっているかも知れませんね。
以上「ETC2.0で得られるプローブデータを使って渋滞の原因をピンポイントで解析」という記事でした。
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